研究概要 |
人工林を天然林に誘導するための技術的基礎資料を得るため、更新材料の分布や伐採後の稚樹の成長及び生存様式を調べ、林冠管理との関係を解析することを本研究の目的とする。今年度は研究の初年度であり以下の項目を調査した。 1,人工林内の更新材料の分布と森林属性 スギ人工林で木本類の種多様性を調べた。種数は樹齢と強く依存していた。また隣接する林のタイプや前生状態に関係なく、むしろ地形の影響を受けた。間伐などの保育作業は草本層の特定種群の繁茂に寄与すると考えた。 屋久島で天然林に隣接する人工林の高木性稚樹密度を測定した。天然林の稚樹密度が高い場合に人工林の稚樹密度は天然林より著しく低かった。人工林内の切株は更新場所として有効だが、成倒木は有効であるとは言えなかった。 2,伐採後の稚樹の消長 ヒノキ林伐採跡に分布するモミ稚樹密度と1年間の生存率を調べた。平均3000本ha^<-1>の稚樹が分布しており伐採後1年間の健全率は約80%と高かった。 3,伐採による環境変化に伴う稚樹の生態生理的反応 上述のヒノキ林伐採跡で、伐採1年後のモミのXPP_<tlp>は林内個体より低く林縁個体とほぼ同程度で、伐採に伴う乾燥環境に対して適応していた。スギ林内に植栽されたイチイガシの日光合成速度をギャップからの位置別に調べた。夏期にはギャップ内個体が最も高いが、冬期にはギャップ北側個体が最も高かった。ギャップ南側の個体の光合成速度は1年を通じて低かった。 4,林冠構造と林床環境変化のモデル化 林冠モデルの適用範囲を広げるため、スギの着葉の三次元分布の個体サイズによる違いを解析した。スギの着葉構造は幹からの距離ごとの葉層厚・着葉集中深・樹冠表層葉密度の三特性値で表現した。このうち二つの特性値は個体サイズと密接に関係した。
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