研究課題/領域番号 |
10460071
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
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研究分担者 |
新谷 博幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282693)
飯塚 堯介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
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キーワード | 立体異性 / 光学活性 / リグニン / パルプ / 漂白 / オゾン分解 / エリトロ / トレオ |
研究概要 |
立体構造が異なると、化学的反応性も異なるのが一般的であるが、リグニン化学においては、立体構造と化学的反応性の関連は、深くは追求されてこなかった。リグニンの分解反応を考える際に最も主要な構造であるアリールグリセロール-β-アリールエーテル(β-O-4)結合はエリトロ、トレオという二つの立体異性体の混合物である。本年度は、β-O-4結合のエリトロ型、トレオ型の反応性が、酸化分解過程でどのように異なっているかを詳しく検討した。リグニン試料として摩砕リグニン(MWL)を用い酸化反応としては、リグニンの酸化分解法として代表的なものである、亜塩素酸酸化、過マンガン酸カリウム酸化を行った。酸化剤の量を段階的に変えてMWLを酸化し、それに伴う上記構造のエリトロ・トレオ比の変化を、オゾン分解法によって解析した。その結果、亜塩素酸による酸化分解過程では、エリトロ、トレオの反応性に顕著な差があることを示す結果は得られなかったが、過マンガン酸カリウムによる酸化過程ではエリトロ型に優先的な反応が進行していることが確認できた。前者の結果については、木粉を用いた実験においても、脱リグニンとともにエリトロ・トレオ比がほとんど変化しない、という結果によって裏付けることができた。通常、後者の反応は酸性下で行うと芳香核部分の酸化も進行することが知られているがそれにもかかわらず、反応性が側鎖部分の立体構造の影響を強く受けていることは、反応機構上極めて興味深い。 また、アルカリ蒸解過程における非フェノール性とフェノール性のβ-O-4結合の反応性の差を利用してフェノール性β-O-4結合のエリトロ・トレオ体比についての知見を得た。
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