研究課題/領域番号 |
10460072
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥山 剛 名古屋大学, 農学部, 教授 (00023482)
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研究分担者 |
寺沢 実 北海道大学, 農学部, 教授 (50003124)
渡辺 拡 名古屋大学, 農学部, 助手 (20293714)
吉田 正人 名古屋大学, 農学部, 助手 (30242845)
山本 浩之 名古屋大学, 農学部, 助教授 (50210555)
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キーワード | 肥大成長 / 接線ひずみ / 膨圧 / 日周期 / FE-SEM / リグニン / あて材 / 光周期 |
研究概要 |
この研究の目的は、日照の日周期に起因する形成層細胞の膨圧の変動が、細胞壁形成過程における細胞壁の物理的伸縮を生じさせ、その物理的な細胞壁の伸縮がリグニン、ヘミセルロースの沈着に影響することを検証することにある。 屋外に傾斜して成育する20年生のスギでは、傾斜樹幹下側の圧縮あて材を形成する部位において、内樹皮の接線ひずみの変動が傾斜樹幹の上側より大きいことが明らかになった。この部位では、圧縮あて材が形成されており、やはり膨圧の変動に伴うリグニンの沈着が促進されることを予測させた。現在この部位のミクロフィブリル及びマトリックス成分の沈着状況をFE-SEMを用いて分析中である。 一方、グロースチャンバーの中で、通常の日光より660nmの波長をLED-Rで増加させた人工光を用いてスギ苗を生育させ、接線ひずみの光周期を測定した。その結果、接線ひずみの光周期は確実に検出されることが解ったが、ひずみの日周期は日光のそれの約半分であった。そして、圧縮あて材が形成されていた。赤系統の光は、樹木の肥大成長とともにリグニン沈着を促進する効果があることが判明した。 この実験に平行して、北海道大学において、屋外の広葉樹の接線ひずみの日変動の年間測定を行った。その結果、イタヤカエデとシラカンバの接線ひずみの年間変動に大きな違いがあることが解った。すなわち、イタヤカエデでは3月の樹液湧出期間に樹幹は接線ひずみの変動を示さないものの、根のひずみは日中に大きな伸びのひずみを夜間に収縮を示す。反対に、シラカンバの根は、4月初旬の日中に大きな収縮を、夜間に伸びを示す。ところが、5月の成長開始後は、両者とも樹幹、根とも同様の日周期を示す。このことから、成長開始時の水の樹幹内移動は樹種によって異なるが、成長が始まると樹木内の水分は同じ動きを示し、肥大成長へと繋がると理解される。
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