研究課題
スギ(Cryptomeria Japonica D.Don)から円筒形の試験体を切りだし、木炭の原料とした。密閉式の実験室用炭化炉を用いて空気を遮断した状態で700℃、30分間加熱した。その後室温まで自然冷却した。透過型電子顕微鏡観察用の試験体はイオンミリング装置(Gatan-Model 691)を用いて調製した。そして木炭の微細構造を透過型電子顕微鏡(PHILIPS-CM200)を用いて観察した。木炭の微細構造を観察したところ、球状で何層にも重なったさまざまな大きさのタマネギ型フラーレンを見出した。試料台を傾けることで各粒子がほぼ球状であることを確認することができた。タマネギ型フラーレンでは、中心にフラーレンC_<60>が存在する。本実験で観察されたC_<60>の大きさは10Åであったが、報告では8-20Åと報告されている^3。タマネギ型フラーレン内の格子間の間隔は5-6Åで黒鉛の面間隔(3.4Å)と比較すると大きい。一定の角度で配向する炭化ミクロフィブリルを観察し、ミクロフィブリルを取り囲む領域にタマネギ型フラーレンを確認した。ミクロフィブリル内の微細構造はランダム構造を示し、ミクロフィブリルを取り囲む領域の微細構造とは明らかに異なる。本報告ではミクロフィブリルとそのまわりの微細構造の違いと何が見えているかについて説明した。本研究の成果は、間伐材や未利用木材を出発点としたフラーレン生成の可能性を示唆している。
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