研究概要 |
最近ダイオキシンによる環境汚染が深刻な社会問題となっている。本研究は担子菌のxenobioticリグニン分解能力を環境浄化に応用しようとするバイオレメディエーション技術の開発を目的としている。担子菌のなかで白色腐朽菌は、天然の三次元ポリマーである木材中のリグニンを分解できる唯一の微生物群であり、その酵素系は他の微生物にみられない特異な機能を有している。本研究では、白色腐朽菌が産生するエーテル結合開裂酵素に注目し、ダイオキシン類のin vitro分解を試みるものである。リグニンの化学構造の約50%はアリールエーテル型構造であり、リグニンの生分解がスムーズに進行するためには、この構造を特異的に開裂する酵素が存在するのではないか、との仮説のもとに本研究に着手した。 アリールエーテル型結合の開裂を短時間で容易に判定するために、エーテル結合の開裂により蛍光を発し、リグニンペルオキシダーゼにより酸化され2次的にエーテル結合が開裂しないように、芳香環の電子密度を低下させたリグニンモデル化合物を合成した。リグニンモデル化合物を含むKirk基本寒天培地を調製し、前培養した木材腐朽菌250株を植菌し、経時的に蛍光を観察したところ、明瞭な蛍光を発する菌株5株の選抜に成功した。これらの5菌株のダイオキシン分解能力を2,7-DCDDを基質として評価し、強力なダイオキシン分解菌であるMZ-340株を選抜した。この菌株を液体培地にて振とう培養し、得られた培養液により2,7-DCDDを処理したところ分解が観察され、ダイオキシンのin vitro分解に成功した。
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