最近ダイオキシンによる環境汚染が深刻な社会問題となっている。本研究は担子菌のxenobioticリグニン分解能力を環境浄化に応用しようとするバイオレメディエーション技術の開発を目的としている。担子菌のなかで白色腐朽菌は、天然の三次元ポリマーである木材中のリグニンを分解できる唯一の微生物群であり、その酵素系は他の微生物にみられない特異な機能を有している。本研究では、白色腐朽菌が産生するエーテル結合開裂酵素に注目し、ダイオキシン類のin vitro分解を試みるものである。リグニンの化学構造の約50%はアリールエーテル型構造であり、リグニンの生分解がスムーズに進行するためには、この構造を特異的に開裂する酵素が存在するのではないか、との仮説のもとに本研究に着手した。前年度はエーテル結合の開裂を指標にスクリーニングを行い、高活性ダイオキシン分解菌MZ-340株の分離に成功した。今年度得られた知見は以下の通りである。 1.菌体外粗酵素液によるダイオキシン類のin vitro処理:前年度に選抜した高活性ダイオキシン分解菌MZ-340株を種々の培養条件下で液体培養を行い、粗酵素液を調製した。その粗酵素液とダイオキシン類の標準品を作用させたところ2塩素置換から8塩素置換のすべてのダイオキシン類が減少することを明らかにした。さらに、この現象を詳細に検討したところ、粗酵素液中のタンパク質によるトラッピング現象であることを明らかにした。 2.菌体外物質による土壌および飛灰中ダイオキシン類の処理:MZ-340株の培養条件を詳細に検討し、ダイオキシントラッピング物質を多量に産生する条件を見い出した。ダイオキシントラッピング物質を土壌および飛灰に作用させ、ダイオキシン類が水層に移行することを明らかにした。
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