針葉樹細胞間の水分通導に大きな役割を果たす有縁壁孔は、細胞が死滅した後にピット壁によって閉鎖されてしまうので、木材を利用する上で大きな課題である水分の任意制御を困難にしている。この問題を根本的に解決するためには、ピット壁のみを選択的に破壊するバイオロジカルプロセスが必要である。そこで、木材細胞のバイオロジカルプロセスに、淡水圏ミクロフローラを利用するシステムを開発するため、淡水圏ミクロフローラと木材との相互関係を生態学的に明らかにし、ミクロフローラが木材の乾燥性、薬液注入性などの諸物性に与える影響を究明する。 淡水圏ミクロフローラの攪乱解明: 当大学付近の池を水中貯木用のフィールドとして選定しスギ原木を貯木し、この池水に生息するバクテリアをはじめとするミクロフローラの全体的な経時的変化・消長を水のC/N比、BOD、pH、温度などとの関連で把握した。 材中水分移動と材中ミクロフローラおよびピット壁崩壊過程との関係解明:淡水圏ミクロフローラの全体像を明らかにするとともに、水中貯木による材中水分分布の経時的変化を明らかにした。また、乾燥性、注入性とピット崩壊過程との関連を顕微鏡的及び浸透性実験などによって検討した。これらの結果に対する生態学的考察は、定常あるいは非定常状態を容易に作り出せる小規模の実験の結果に基づいて行っている。
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