研究課題/領域番号 |
10460077
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
土居 修一 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 教授 (20279508)
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研究分担者 |
今村 祐嗣 京都大学, 木質科学研究所, 教授 (70151686)
伊藤 良介 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 研究員 (30310171)
太田 章介 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 研究員
山内 秀文 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 助手 (90279513)
栗本 康司 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 助手 (60279510)
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キーワード | バクテリア / スギ材 / グラム陰性 / グラム陽性 / 水中貯木 / 壁孔 / 乾燥性 / 注入性 |
研究概要 |
研究のターゲットはスギ乾燥性の改善であったが、貯木後の組織構造変化を見る限り、比較的短期間の貯木でその成果は期待できないことが示唆された。さらに長期の影響を観察することによって明らかされよう。科学的に重要な側面は、貯木中に関与する微生物の再検討である。従来の研究では、細菌を貯木材から分離して再現実験を行い、結論としてほとんどがグラム陽性Baccillus属による壁孔壁攻撃に帰するであろうとしている。タイプカルチャなどを用いて実験を行うと、辺材での壁孔壁破壊などの現象が再現できるがこれには疑問も残る。微生物生態学的には、水中ドミナントは一般にグラム陰性菌である、という見解との乖離である。本研究で分離した菌もそれを裏付け、ほとんどがグラム陰性でこの属の分離は皆無に等しかった。反面、貯木されたスギ辺材での壁孔壁破壊は、従来から指摘されているように頻度高く生じていることも明らかであった。したがって、これまでの研究の成果は、いずれもその最終段階に、結果としてこの属が分離されたと考えるほうが妥当である。本研究では淡水池における貯木を前提として試験材の伐採-貯木-引き上げ-菌分離及び組織変化観察を連続的に行うケーススタディを実施し、その全過程で釣菌される細菌の性質や木材細胞への関わりを明らかしようとした。また、木材細胞壁孔壁の分解に関与する細菌を特定しようと試みた。 以下に述べる結果は特に断らない限り辺材に関することである。明らかになったことは、樹木は伐採直後から微生物の侵入を受けること、水中貯木でなくとも含水率の高い状態が維持されれば細菌が侵入し、壁孔壁が分解されることである。水中貯木の全過程でドミナントであったのはEnterobacter属であり、その他もほとんどがダラム陰性菌であることも明らかとなった。Baccillus属はわずか1回分離されたにすぎず、従来の研究とは異なる結果を得た。これは、筆者らの推定の正しさを立証した。この属が壁孔壁分解に主役をなすか検討するため、その酵素系に関してスクリーニングを行ったが、その結果は判然とせず、この証明は今後の検討に委ねることとなった。また、水中貯木の実験室的再現を試み、早い時期に壁孔壁が分解されることを明らかにした。しかし実験経過中あるいは実験後に分離された、単独の菌による壁孔壁分解実験あるいは酵素系の検討では壁孔壁分解にもっとも貢献する菌を特定できなかった。これも今後の研究に委ねる。
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