研究概要 |
1.マガキ血球の異物接着部位であるインテグリン様分子の特定と塩基配列の決定 昨年度までの研究において、マガキ血リンパ上清やフィブロネクチンを介した血球の接着は、細胞外基質成分で細胞接着能を有するタンパク(フィブロネクチンやビトロネクチンなど)の接着部位であるRGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)配列を特異的に認識して接着を促進する、インテグリン様の受容体の介在によることが、生化学的手法により明らかにされた。そこで、本年度はこのインテグリン様分子の特定と塩基配列の決定を試みた。 その結果、RGDモチーフと特異的に結合するリガンド結合ドメイン(LBD)を含む905bpの部分配列を決定した。既知のインテグリン分子と比較した結果、マガキ血球のLBDは、腹足類や昆虫類のものと非常に高い相同性を有すること、哺乳類のインテグリンβ鎖と相同性を示すことが明らかとなった。全塩基配列は決定できなかったが、インテグリン様分子だと予想される2,600bpのcDNAのクローニングは成功した。 2.血球における異物認識分子の同定 酵母の細胞壁成分であるザイモサン・ザイモセルに対する血球の貪食能発現の実験を行った結果、血球によって異物と認識される、あるいは結合の対象となる異物粒子側の構成成分として、β-1,3-グルカンが重要であると考えられた。一方、酵母細胞壁の主要成分であるマンナンに対しては特異的な結合をしないことが示唆された。また、阻害反応は特定の多糖類を添加した時のみに認められ、血球に特定の分子を認識する部位の存在が考えられた。
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