研究概要 |
本年度の研究実施計画に沿って研究を進め,以下の成果を得た。 1. 日本に接岸するシラスウナギ(以下,シラス)の時期別・場所別遺伝的変異を調べるために,神奈川県・茨城県・鹿児島県において漁期の早期(12月)と終期(3月)に採集したシラス合計57個体について,ミトコンドリアDNA(mtDNA)の調節領域と2つのtRNA遺伝子領域(Pro,Thr)の塩基配列(617bp)を決定した。その結果,当該領域に高い遺伝的変異性が示されたが,時期的な遺伝的差異は認められなかった。また場所別遺伝的変異を調べるために,全57個体の塩基配列を用いて系統樹を推定し,採集地点内および地点間における平均塩基相違率を算出したところ,同一地点で採取された個体がひとつにまとまることはなく,塩基相違率においても地点間における明瞭な差は認められなかった。また,ウナギの核ゲノム分折を行う準備としてAFLP法のSelectivePCRに用いるプライマーの選定を行ったところ,3組のプライマーセットがウナギにも応用できることがわかった。 2. 1996年12月,台湾東方海域において採集された最大伸長期(変態直前期)のレプトケファルス(以下,レプト)と接岸したシラスについて耳石微細構造と耳石中のSr/Ca比を分析し、変態時期と期間を推定した。5個体の最大伸長期のレプトと12個体のシラスの日齢は、それぞれ94日〜134日、143日〜203日の間にあった。シラスの耳石の輪幅の変化は、中心から縁辺に向かって80〜160日齢を境に急増し,これに一致してSr濃度は急滅した。このような特長的な変化はレプトの耳石にはみられないので,この点が変態開始点と考えた。また変態は輪幅が最大になる点で終了すると考えられ,したがって,ウナギの変態期間は20〜40日間と推定された。
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