研究概要 |
本年度の研究実施計画に沿って研究を進め,以下の成果を得た。 1.耳石による初期生活史・回遊機構の解明: 1998年6月と8月に北緯13-17度,東経137-143度の海域から採集されたウナギレプトケファルス計24個体について耳石日輪解析を行った結果,これらは全て1998年5月と6月の新月前後に産卵されたものであることがわかった.また,これらの試料に基づいて次の成長式を得た:TL(mm)=0.464×Days+4.46. 2.DNA解析による集団構造の解明: 1994年,1995年,1998年の「白鳳丸」と「駿河丸」の調査航海で採集されたウナギのレプトケファルス計50個体について,mtDNA・調節領域の部分塩基配列(590bp)を決定した.これらのデータを採集地点間,年度間で比較したところ,その遺伝的変異(ハプロタイプ組成)に差は見られなかった.異なる年度,異なる海域で採集されたにも関わらず,均質な遺伝的変異を持つこと,またその変異性は,東アジアに接岸するシラスウナギの遺伝的変異と比較しても差は認められなかったことから,ウナギの産卵には,種の遺伝的特性を代表するに十分な個体数が常に参加しているものと推測された.さらに,大部分のレプトケファルスの塩基配列は相互に異なっていたが,一部全く同じ塩基配列のmtDNAを持つ3組9個体のレプトケファルスが出現した.以上の結果は,昨年度までのシラスウナギの解析から得られた「ウナギの単一集団説」を支持するものである. 以上の他に,日本各地の6地点,中国の2地点,韓国の2地点および台湾1地点から約3150個体のシラスウナギを採集し,現在,耳石微細構造解析と遺伝子解析を進めている.
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