1. 新しい光情報入力系の同定 松果体、網膜は光情報入力系として既に確定されているが、脳内光受容器については存在は未だ不明である。今年度はまず松果体と網膜内に存在する視物質数種の抗体を作成した。今後これらの抗体を用いて免疫組織化学的手法により脳内光受容器の同定を行う。 2. 生物時計機構の分子生物学的解析 アユ松果体の灌流培養を行い、メラトニン分泌の生物時計と光による制御機構について調べたところ、暗期に高く明期に低い日周リズムを示した。このリズムは恒暗条件下で少なくとも10日間は自由継続し、その周期は約25時間であるこからサーカディアンリズムと判定された。魚類のメラトニン合成機構の分子的基盤を明らかにするため、ニジマス網膜からアリルアルキルアミンN-アセチルトランスフエラーゼ(AANAT)cDNAをクローニングし、発現場所を調べたところ、網膜にのみ発現していることが判明した。この結果、松果体と網膜では異なるタイプのAANATが存在することがわかった。ノザン解析によりmRNA量の昼夜変動を調べたところ暗期は明期の約3倍量が発現していることもわかった。また生物時計を支配していると考えられている2つの遺伝子ClockとPeriodについてcDNAクローニングを行っている。 3. メラトニン受容体の分子生物学的解析 哺乳類のメラトニン受容体塩基配列をもとに受容体蛋白の部分ペプチドを数種合成し抗体を作成した。今後免疫組織化学的手法により魚類における受容体の局在を調べる。また魚類のメラトニン受容体cDNAクローニングを継続している。
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