1.新しい光情報入力系の同定 魚類における網膜以外の新しい光情報入力系の分子的基盤を明らかにするために、光受容能の存在が示唆されている脳から光受容タンパク質遺伝子の一つであるロドプシンのcDNAクローニングを試みた。RACE法を用いて、脳内で発現しているロドプシンcDNA塩基配列の全長を決定した結果、脳ロドプシンcDNAは網膜ロドプシンcDNAと塩基配列が完全に一致した。ロドプシンmRNAの分布をin situハイブリダイゼーション法を用いて調べたところ、間脳に存在することが判明した。 2.生物時計機構の分子生物学的解析 RT-PCR法を用い、アユ脳から時計遺伝子CLOCKをコードするcDNAの部分クローンを得た。さらにリアルタイムPCRによるCLOCKのmRNA定量法を確立した。現在、他の時計遺伝子およびメラトニン合成酵素AANATのmRNA定量法を開発中である。また、アユ松果体を恒暗条件下で灌流培養し、タンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)またはmRNA合成阻害剤(DRB)の存在下で松果体に光パルスを与え、メラトニン分泌のサーカディアンリズムの変化を調べた結果、光によるサーカディアンリズムの位相前進がシクロヘキシミドとDRBのいずれによっても阻害された。このことから生物時計の光情報受容能維持もしくは位相変化には新規のmRNAおよび蛋白質合成が必要であることが明らかになった。 3.メラトニン受容体の分子生物学的解析 縮重プライマーを用いたPCR法によりアユ脳に存在するメラトニン受容体のcDNAクローニングを試みているが、現在までのところメラトニン受容体をコードしていると考えられるcDNA断片は得られていない。
|