研究概要 |
Pasteurella piscicida のゲノムを8塩基認識の制限酵素で消化し,パルスフィールド電気泳動を行いゲノムサイズを測定したところ,3.2-3.6Mbであることがわかった。次いで,ゲノムライブラリーをコスミドベクターSuperCos1で作成した。本菌のゲノムを6から7倍程度カバーすると考えれる500個のクローンを選び,両末端側から塩基配列を決定した。決定した塩基配列の長さを合計すると599,381bpで,1配列当たりの平均長は660bpであった。決定した塩基配列をDNAデーターバンクに登録されている配列と比較したところ,1,024個の遺伝子と相同性を示した。しかし,25配列は既知の配列とはまったく相同性を示さず,本菌に特有の配列であると考えられた。感染・発症等の病原性に関与すると考えられる遺伝子も多数見られた。毒素関連の遺伝子として10遺伝子,細胞表面のきょう膜,リポ多糖合成に関与する遺伝子が6遺伝子見られた。また,本菌は運動性を示さず,鞭毛や線毛を持たないとされているが,線毛合成に関与する遺伝子や鞭毛合成に関与する遺伝子クラスターが見られた。さらに,毒素遺伝子として溶血素遺伝子と相同性を示す遺伝子が見られたが、本菌は溶血素を産生しないことが知られている。今回のゲノム解析により,本菌は試験管内で培養したときには見られない性状を示す遺伝子をゲノム上に多数コードしていたことから,宿主内でこれらの遺伝子が発現し,発症あるいは感染に関与していることが考えられた。
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