研究分担者 |
古澤 昌彦 東京水産大学, 水産学部, 教授 (60281002)
石松 隆和 長崎大学, 工学部, 教授 (10117062)
粕谷 俊雄 三重大学, 生物資源学部, 教授 (00013574)
赤松 友成 水産庁水産工学研究所, 漁業生産工学部, 農林水産技官(研究職)
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研究概要 |
天草通詞島の周辺海域あるいは長島海峡に現れるハンドウイルカを対象として,上空から群れの撮影を行う気球システム、ソノブイによる鳴音連続収録システム,群れの音響的追跡手法の開発を試みた.さらに水中マイクロホンによる鳴音収録,測量機器のセオドライトを用いた群れの出現位置の計測,群れの写真撮影および群れの行動観察を行った. 気球システムは実用化のレベルに達した.このシステムを運搬できる範囲に鯨類が出現するという条件が満たされれば,他の鯨類にも適用可能である.ソノブイを用いた鳴音収録に関して,24時間連続収録が可能となるなど,システムの進展が見られた.1台のソノブイの探知距離は現状では数100mであるが,多くのソノブイを複数の地点に昼夜を問わず置くことができれば,群れの1日の行動圏の把握と群れの1日の行動や生活の把握が期待できるレベルに達した.本研究では複数のモニタリング手法を組み合わせたハンドウイルカの行動生態調査を試みた. 気球システムから得られた群れ画像を用いて,出生率を年あたり2.1%以上,出産盛期を春から秋と推定した.ソノブイより群れの鳴音を連続的に収録できた.水中マイクロホンによる鳴音収録から,ハンドウイルカは数m先を音響探査することもあれば,200m程度先を探すこともあることが分かった.セオドライト観測から,群れは概して朝方に通詞島の東の海域に出現し,昼間に島の北側に滞在し,夕方に島の西の海域に移動することを明らかにした.群れの行動観察から,概して朝夕に活発に活動するのに対し,昼間は特定の場所に停滞し,水上行動をほとんど示さずに潜水・浮上を繰り返すことが多いことが分かった.識別個体の撮影履歴データを用いて,識別可能個体の死亡率を年あたり3.4%と推定した.また1994年から98年まで個体数は200頭前後で年々ほぼ安定していた.
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