研究概要 |
養殖漁場における広範な抗生物質の使用は、重大な環境問題を引き起こすと予想される。これらの抗生物質の環境への影響を知るために以下の実験を行った。 非養殖漁場から採取した堆積物を用いて培養実験を行った。堆積物にストレプトマイシンを加えないものと、濃度3段階(5ppm,10ppm,20ppm)のストレプトマイシンを一定間隔で加えるものとで21時間培養した。底質パラメータ(ph,Eh,AVS-S,IL)、ストレプトマイシン濃度、微生物バイオマーカーについて分析を行った。ストレプトマイシン濃度は、実験中添加し続けたことにより徐々に増加した。リン脂質脂肪酸濃度から見積もった堆積物微生物バイオマス量は、ストレプトマイシンを加えたサンプルにおいて大きく減少した。クラスター分析の結果、ストレプトマイシンにより堆積物微生物群集構造が撹乱されたことが明らかになった。非養殖区の堆積物から微生物を分離し、これにオキシテトラサイクリンを加えるもの、加えないものとで96時間培養した。この実験では濃度3段階(0.2ppm,1ppm,2ppm)のオキシテトラサイクリンを投与した。生きた微生物バイオマスと群集構造、死んだ微生物バイオマスと群集構造を調べるためにバイオマーカー分析を行った。これらの結果より、抗生物質の使用されていない環境中の微生物群集にオキシテトラサイクリンが影響を及ぼすことが明らかになった。
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