研究概要 |
海産魚介類組織中にはトリメチルアミン-N-オキシド(TMA○)が多量に含有されているが,一部の魚介類,特にタラ科魚類では筋肉中のTMAOの酵素的分解によって生成するホルムアルデヒドによる肉タンパク質の変性が問題となっている。これまでの多くの研究にもかかわらず、本酵素(TMAOase)は可溶化されていないため,性状が不明である。そこでスケトウダラ筋肉中の本酵素活性の所在を調べたところ,水溶性タンパク質画分及びミクロソーム画分には検出されず,全活性は筋原繊維画分に検出されたので,これを酵素標品としてその性質を検討した。その結果によると,至適pH7.0,熱安定性を調べたところ活性は40゚C以上で低下した。また活性の発現にはcofactorとしてFe^<2+>と還元剤(アスコルビン酸,システイン)が必要であった。筋原繊維画分を用いた実験結果から,スケトウダラのフィレー,落身,すり身中には本酵素がそのまま存在しているので,基質があれば反応が起きる可能性が推測された。 次に,本酵素の可溶化を試みた。不溶性酵素は膜成分などに結合している可能性があるので,界面活性剤処理などの種々の方法で可溶化を試みたが,有効ではなかった。筋原繊維のアセトン粉末を調製したところ,失活することなく粉末化されたので,これから活性の抽出を試みた。界面活性剤では可溶化の度合いは低かったが,0.5-1MNaClでは50%可溶化された。そこでさらに精製するために硫安分画,イオン交換クロマトグラフィーを試みたが,再現性が悪く効果的方法ではなかった。最終的にはアセトン粉末から低塩濃度下でアクチンを抽出し,その残渣から1M NaClで抽出後酸処理することによって活性の可溶化に始めて成功した。比活性は0.70unit/mgとなり、筋原繊維画分からおよそ25倍に精製され,回収率は62%であった。
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