研究概要 |
魚介類のなかでタラ科の魚肉にはトリメチルアミンオキシド(TMAO)が多量に含まれており,貯蔵中にジメチルアミン(DMA)とホルムアルデヒド(FA)に分解され,生成したFAは魚肉の品質を劣化させる。しかし,貯蔵中のTMAOの分解機構は不明で,TMAO脱メチル化酵素(TMAOase)による説と非酵素的分解説があるが,酵素は未だ精製単離されていない。 (1)本研究ではまず,スケトウダラ筋肉の筋原繊維画分にTMAOase活性が存在することを明らかにした。そこで,これから酵素を単離するために種々の方法を検討した結果,次の調製方法を開発した。すなわち,酸処理により酵素を可溶化し,イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過,nativePAGEによって精製し,単離することに成功した。 (2)単離した酵素は分子量23,000,至適pH7.0で,活性発現にはFe^<2+>をcofactorとして必要とした。Fe^<3+>は効果がないことから,Cys,アスコルビン酸,DTTのような還元剤は鉄の酸化を防止するために必要なことがわかった。TMAOaseのアミノ酸分析でAspを多量に含む特殊なタンパク質であることが明らかになった。現在一次構造は解析中である。二次構造はランダムコイル状に近いことがCD分析でわかった。本酵素は耐熱性で,変性剤に対しても安定であった。 (3)魚肉中のDMAとFAの生成は-5〜-10℃の凍結貯蔵中に顕著におきるが,この反応は非酵素的であることを推定した。-4℃での過冷却状態ではTMAOは酵素存在下でのみ分解されたが,-4℃凍結状態ではFe^<2+>とCys存在下で非酵素的に分解され,酵素の影響はなかった。-20℃凍結の場合もTMAOは非酵素的に分解された。 (4)魚肉筋原繊維タンパク質は数mMのFAで変性し,その塩溶解性,ねり製品製造におけるかまぼこゲル形成能が失われるが,Cys,His,グルタチオンはこれらの変性を効果的に防止できることを発見した。
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