基質UDP-N-アセチル-D-グルコサミンに酵母Saccharomyces cerevisaeのキチン素活性化酵素を添加し、生成するキチンの重量を測定するするキチン合成酵素系を構築した。また、海洋生物として、魚類8種、甲殻類5種、軟体動物12種、原索動物1種を供試し、主として筋肉部を80%メタノール抽出後、水およびエーテルでニ層分配して、水溶性画分と脂溶性画分に分画した。両画分につき上記のキチン合成酵素系により阻害物質のスクリーニングを行ったが、再現性に若干問題があり現在さらに検討中である。 そこで阻害活性測定法の改善に資するため、調製した各試料の両画分につき、エラスターゼ阻害活性とコラゲナーゼ阻害活性とをスクリーニングした。前者についてはN-succinyl-(Ala)_3-p-nitroanilideを、後者については4-pheny lazobenzy loxycarbony1-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Argを基質として用い、いずれも吸光度法によって測定した。その結果、エラスターゼについてはサザエとツブガイの水溶性画分が100%阻害を示し、強し阻害活性物質の存在が示唆された。マガキとムラサキイガイの水溶性画分にそれぞれ54%、48%の中程度の活性が認められたが、脂溶性画分で40%以上の阻害活性を示すものはなかった。このように軟体動物の水溶性画分に活性物質が局在することは興味深い。一方、コラゲナーゼについては、際立って強い活性を示すものは見当たらなかったが、50%付近の活性を示したのは、ナンキョクオキアミ、マダコ、ムラサキイガイの両画分、カツオ、ヤリイカの水溶性画分、ハマグリ、マガキの脂溶性画分であった。エラスターゼ阻害物質については非常に強い活性をもつ物質が既に報告されていること、および試料の入手、精製のプロセスなどを考慮し、現在ナンキョクオキアミの脂溶性画分のコラゲナーゼ阻害物質について精製を進めている。
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