近年、深刻な問題になっている深部真菌症に有効な安全かつ抗真菌剤の開発を目的に、26種の魚介類の可食部を80%メタノールで抽出した水溶性画分と脂溶性画分につき、キチン合成酵素阻害物質をスクリーニングした。併せて、同じ試料につき、最近注目されているエラスターゼとコラゲナーゼの阻害活性もスクリーニングした。以下に、得られた結果を要約する。 1.キチン合成酵素の阻害活性については、水溶性画分で特別に強い活性を示すものは見当たらなかったが、腹足類と斧足類には例外なく、中程度の阻害活性が認められ、アサリで63.6%、シジミで62.5%の値がえられたのは、注目される。 2.エラスターゼの阻害活性の場合、水溶性画分は、サザエとツブガイが100%で極めて強く、次いでカキが53.7%であった。 3.コラゲナーゼの阻害活性の場合、ほとんどの種が両画分とも阻害活性を示したが、特別強い活性は認められず、最高が水溶性画分ではヤリイカの59.5%、脂溶性画分ではナンキョクオキアミの65.0%であった。 以上より、魚介類には種によって、低分子性の安定で安全な各種酵素阻害物質が含まれることが示唆され、機能性食品として、これらの酵素が関与する疾病の予防・治療に役立っている可能性がある。なお、本研究で見出された有望な画分については、溶媒分画、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどにより、有効成分の精製を現在進めており、最終的には、機器分析により構造決定を行い、活性物質の本体を明らかにし、安定で安全な医薬創製のリード化合物を提供したいと考えている。
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