ウナギ血中には高密度リポ蛋白質(HDL)や超低密度リポ蛋白質(VLDL)が多くそのため血中の脂質濃度はトリアシルグリセロール、コレステロール(CH)、リン脂質いずれも高脂血症のヒトの血中濃度より高い。しかし、ウナギは健康上問題はなさそうである。魚類のHDL-結合蛋白質に関する報告は現在までのところないが、ウナギ血中の高い脂質濃度にも関わらず動脈硬化にならないのは、一つにはHDLによるCHの肝臓への輸送によるものと思われる。ウナギ肝臓を0.25M sucrose-10mM Tris-HCL(pH7.5)-0.1mMp-APMSF中でホモゲナイズし、ミトコンドリア、ミクロソーム、細胞質画分を得た。ミクロソーム画分に1%TritonX-100、1mM EDTA、0.1mMp-APMSFを含む10mM Tris-HCl(pH7.5)を加え可溶化した後、HDL-トヨパールカラムに添加し、カラムに吸着された蛋白質を回収した。FITCで標識したHDLを用いて、リガンドブロットを行った。ホモジネート、ミトコンドリア、ミクロソーム、細胞質画分を比較したところミクロソーム画分に最も強くシグナルが確認された。ついで、ミクロソーム画分中 HDL-トヨパールカラムに吸着された蛋白質を調べたところ、14kDaの蛋白質にシグナルがみられた。また、FITC-HDLの20倍量の未標識HDLの存在下でFITC-HDLの結合を調べたところ14kDa蛋白質への結合が強く抑制された。これらの結果から、ミクロソーム画分中の14kDa蛋白質はHDL-結合蛋白質であると考えられた。現在、14kDa蛋白質のN-末端アミノ酸配列を分析中である。今後、アミノ酸配列からDNA断片を準備し、14kDa蛋白質のcDNAを分離する予定である。
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