ウナギにおけるリポ蛋白質の輸送機構

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10460095
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 林 征一 鹿児島大学, 水産学部, 教授 (80041721)
• キーワード: HDL結合タンパク質 / HDL / 脂質輸送 / vigilin / ビテロゲニン / RNA結合タンパク質 / ウナギ / 肝臓

研究概要

高密度リポタンパク質(HDL)は、末梢組織から過剰のコレステロールを肝臓へ輸送することが知られている。肝臓へ輸送されたコレステロールは、胆汁酸に分解され体外へ排出される。このためHDLは抗動脈硬化作用があることが知られているが、コレステロールやリン脂質が肝臓へ輸送される際肝細胞膜にあるHDL結合タンパク質とHDLとの結合が最初のステップとなる。一方、ウナギ血液中には、脂質が正常のヒトの数倍の約2,000mg/dl含まれ、その大半はリポタンパク質として存在している。HDLはウナギ血液中の主要なリポタンパク質であるが、脂質輸送における役割については不明でHDL結合タンパク質(HBP)の有無、その構造や機能に関しても報告例がない。
ウナギ肝臓のミクロソーム画分をタンパク質分解酵素阻害剤の存在下で調製し、可溶化後HDL-カラムによるアフィニテイクロマトグラフィーによりHBPを得た。蛍光標識したHDL、HDLの構成タンパク質であるapoAI及びapoAIIを用いてリガンドブロットを行った結果、14及び14.5kDaのHBPが同定された。両タンパク質のN-末端アミノ酸配列からプライマーを作成し、3'レース法によりHBPのcDNAを得た。更に、両HBPのリガンド特性から、RNA結合タンパク質として報告されているvigilinとの関係を検討するため、ウナギビトロゲニンmRNA及びpGENベクター由来のRNAとの結合を調べた。その結果両HBPともRNAと結合することが分かり、vigilinの一種であることが推測された。

研究成果

• [文献書誌] D.Ndiaye,H.Katoh,Y.P.Ge,N.Iijima,and S.Hayashi: "Monoclonal antibodies to plasma high density lipoprotein (HDL) of eel (Anguilla japonica)"Comparative Biochemistry and Physiology PartB. 125. 473-482 (2000)
• [文献書誌] H.Katoh,Y.P.Ge,D.Ndiaye,and S.Hayashi: "Distribution of apolipoproteins A-I and A-II in serum, secreted proteins by cultured hepatocytes, and the plasma membrane of hepatocytes in eel"Fisheries Science. 66. 579-585 (2000)
• [文献書誌] S.Hayashi,D.Ndiaye,M.Komatsu,and F.-G.Yu: "Regulation of the synthesis and secretion of the lipoprotein by cultured eel (Anguilla japonica) hepatocytes"Trends in Comparative Biochemistry & Physiology. 印刷中. (2001)
• [文献書誌] 林征一(分担執筆): "動物細胞工学ハンドブック(日本動物細胞工学会編集)"朝倉書店. 342 (2000)