研究課題/領域番号 |
10460096
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
水産化学
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
児玉 正昭 北里大学, 水産学部, 教授 (40050588)
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研究分担者 |
小瀧 裕一 北里大学, 水産学部, 助教授 (30113278)
佐藤 繁 北里大学, 水産学部, 助教授 (20170748)
緒方 武比古 北里大学, 水産学部, 教授 (00104521)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2001
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キーワード | 麻ひ性貝毒 / gonyautoxin / saxitoxin / チオール / タンパク / ホタテガイ / 毒-チオール複合体 |
研究概要 |
筆者らは大船渡湾において、1982年以来PSPによるホタテガイの毒化をAlexandrium tamarenseの発生との関連で調査し、貝の毒化が毒の食物連鎖による貝への移行蓄積だけでは説明できないことを指摘してきた。本研究の目的は、有毒渦鞭毛藻の捕食による貝類の毒化現象を再検討し、貝の毒化機構を明らかにすることを目的とする。まず、A. tamarenseの培養細胞を貝類に給餌し、貝の毒蓄積のkineticsを検討した。その結果、貝に蓄積した毒は環境水中に放出されることを確認したが、1)貝類は時に与えた毒量以上の毒を蓄積すること、2)給餌を停止後、貝に蓄積した毒量と環境水中の毒量の和は減少した後再び増加するなど、field調査で観察されてきた不思議な現象が観察された。本研究において毒はglutathione (GSH)などのチオールと結合して複合体(thiol-STXs)を作ることを明らかにした。2)の結果は、毒が貝のGSHと結合し、通常の分析では検出できないGS-STXsに変化した後、再び毒として遊離されることを示唆するが、有毒ホタテガイ中腸腺中にはGS-STXsは検出されなかった。この原因は、GS-STXsが組織中のgGTPにより分解される過程で、システインに結合した毒もアルカリ分解物に類似した蛍光物質に分解されることによることが判明した。次に有毒ホタテガイ中腸腺の組織切片をSTXに対する抗体で染色したところ、血球と思われる顆粒の細胞質および栄養細胞を取り巻く膜に強い発色が見られた。中腸腺のbuffer抽出物および膜タンパク画分ををゲルろ過して得た高分子画分をmercaptoethanolで処理したところSTXsが遊離し、PSPがこれら画分中のタンパクのシステイン残基と結合していることが明らかになった。一方、毒と結合したタンパクを含む画分をproteaseで消化したところ、GTXsが遊離し、システインとの結合とは異なる形でタンパクと結合した毒の存在が明らかになった。さらにprotease消化物中には前述の毒の分解物と類似の蛍光物質の存在が認められ、タンパクの消化に伴い、結合した毒が分解されることが考えられた。本研究は、貝の体内で毒が分解を含む代謝を受けることを始めて示したもので、今後のPSPの代謝研究の端緒となるものと考える。
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