研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、環境安全と土地所有の対立調整を軸として、地方公共団体の環境政策の実態・効果・問題点を整理するとともに、将来の我が国における土地利用規制、土地税および土地公有化という三つの政策手段の組み合わせによる、環境保全型社会構築に向けた総合的土地制作形成の方向を提示することにある。本年度は4年間にわたる本研究の初年度として緑地保全に関する文献収集と代表的事例に関する実態調査を行い、わが国における緑地保全の現状を概観した。緑地および緑地保全に関する研究としては、都市部の緑地に関しては、地域デザイン・まちづくりの観点から論じたものが多く、農山村部の緑地に関しては農林業維持および農山村維持の視点から生産機能以外の農地・林地がもつ機能の再評価を論じたものが目立った。実態調査の結果わかったことは以下の通りである。自治体において緑地の保全は重要な政策の柱の一つのなっていることが多いが、その担当部局は複数の部局にまたがっていることが多く、その名称も多様である。また、今回調査した地域における緑地保全の方法は用途・開発の規制、生産緑地の指定、緑地(緑化)協定、公有地化、ナショナルトラスト、補助金が代表的なものである。都市部では公園、公共施設、街路樹、ビル・工場敷地、生産緑地が主な緑地であった。なかでもまとまった緑地は、公園および公共施設でみられた。生産緑地に関しては、現地でその土地が生産緑地である旨の表示はされているもののそれ以上の説明は見あたらなかった。一方、今回調査を行った積極的に緑地保全がなされている林地・山地に限っていえば、案内板等による緑地の機能・意義の説明やその他教育機能の発揮が多く見られた。