研究課題
本研究の目的、環境保全と土地所有の対立調整を軸として、地方公共団体の環境政策の実態・効果・問題点を整理するとともに、将来のわが国における土地利用規制・土地税制・土地公有化という三つの政策手段の組み合わせによる環境保全型社会構築に向けた総合的土地政策形成の方向を提示することにある。本年度は、昨年度に引き続き緑地保全に関する資料収集を行った。中でも特に、行政資料に着目し、都道府県庁が発行・所蔵している緑地保全に関する資料の把握と収集を行った。その結果、調査を実施した都道府県はいずれも自然公園、都市公園、道路・河川、公共施設、農地、宅地と、主だった緑に関してはその整備に関して何らかの取り組みを行い、資料を所蔵していることがわかった。また、その整備の方法はマニュアル化されており、気象条件や都市化の進展度合いの違い以外を理由とする際立った特徴を持った都道府県は見受けられなかった。しかし、その発行・所蔵公開している情報量と市民からみた利用しやすさに関しては都道府県によって大きな違いがあった。住民の緑地に関する嗜好性等を十分に反映された形で緑地の保全が実施されているのか、という疑問が残る。そこで、本年度は、自治体緑地担当者を対象とした調査に先立って、住民の緑地に関する選好・希望を把握するために、住民を対象とするアンケート調査を実施することとした。対象地域は静岡県の天竜川流域に位置する浜松市・浜北市・天竜市の3市である。主な調査内容は、緑地に関する経験・評価・意向である。なお、アンケート調査結果の集計・分析は来年度に行う。来年度は、このアンケート調査結果をもとに、調査地域住民の緑地に対する選好・評価を明らかにし、住民間・住民と行政・住民と産業間にどのような対立が存在し、また、しないのかを明らかにする。そして、典型的な対立関係について、具体的な事例調査等を実施する。