研究課題
本研究の目的は、環境保全と土地所有の対立調整を軸として、地方公共団体の環境政策の実態・効果・問題点を整理するとともに、将来のわが国における土地利用規制・土地税制・土地公有化という三つの政策手段の組み合わせによる環境保全型社会構築に向けた総合的土地政策形成の方向を提示することにある。本研究を通して以下のことがわかった。地方公共団体による環境政策の特徴はその定式化にある。気象条件や都市化の進展度合い以外を理由とする際立った特徴は散見するに留まる。一方、緑地保全に対する地域住民の評価・意見においては、大枠の方針だけでなく、街路樹の樹種選択等細部に対する不満が多くみられる。公共的な緑地の整備・保全は定式化された方針のもとで、専門家の意見等をふまえて実施され、住民意向の反映も近年ワークショップ形式等の導入により進んできているが、緑地に関心を持つ一部住民の意向が強く反映される仕組みになっている。緑地個々の保全に関しては一定の水準に達してきているが、独自性は不足している。また、動物園等緑地利用が主目的でない施設の緑地保全は予算上の理由から十分行われていない事例もある。私有地の緑地においては、林地を中心とする緑地と花粉症の関係が対立の主題であり、庭木等・生垣等の緑に関する対立は今回の調査の範囲では顕在化していない。今後の土地政策として以下のとおり提案する。法律や地域協定による権利の制限をともなった私有緑地の保全を可能とする地域社会の醸成。緑地計画と土地税制との体系的結合。保全不十分な私有緑地の公有化・高税率化や地域住民による保全の実現。任意団体・地域一括登録継続評価方式での簡便な補助金支給システムの構築。地方公共団体による緑地関連予算の複数年度化。公共緑地の保全におけるより多くの地域住民の意見反映と保全作業における地域住民の具体的参画推進。