研究課題
基盤研究(B)
わが国において緑地は都市部、農村部にかかわらず様々なところにある。特に農地や林地はそのほとんどが緑地であるし、都市部においても、道路やビルの間の公園、ビルの屋上、ビルのはた、などにおいて緑を目にする。また、住宅の庭にも緑はある。このような様々な緑地は個人有の場合も公有の場合もあり、所有権の非単一性が緑地をよりよく保全しこうとするときの障害となる。本研究の目的は、多様な所有権の状態に由来する緑地保全の困難さをどうすれば解決できるのか、その方策・主要課題を明らかにすることにある。主たるデータ・資料は電話帳を利用して抽出した天竜川流域の浜松市、浜北市、天竜市の三市の住人を対象とした郵送アンケート調査や各種機関を対象にした聞き取り調査結果にもとづく。これら調査の結果、居住地や、経験・年齢によって、緑地や緑地の保全に対する評価・意向が異なることがわかった。また、現時点において、緑地保全のための法律制度はひとまず整えられており、民間ベースの緑地保全の担い手も出てきている。しかし、そのような人々はまだ限られており、緑地保全に関して意見をもっていたとしてもそれが具体的行動に反映されない多くの人々の今後の動向がこれからの緑地保全のあり方・進捗状況を大きく左右すると考えられる。今後の土地政策においては、人的要素を重視し、広く人々が緑地保全に関して意見を述べ、行動するような社会を形成することに主眼を置いて整備していく必要があるのではないか。