研究概要 |
地域農業のライフサイクルにわたるエネルギー消費・CO_2排出を分析するためには,養分投入・作物生産等の空間的な物質フロー特性の把握が不可欠であるが,農村地域では空間的な推定・把握が困難で,さらに時期・種類によって物質フロー特性の異なる農作物栽培が展開されている。そこで本研究では,具体的な地域を対象に養分投入・吸収・流出などの物質フロー特性が類似する土地利用や活動形態をグループ化するとともに,リモートセンシングによるこれらグループの空間分布を把握を試み,その有効性・限界および実用的な活用手法を検討した。その結果,オペレーショナルな物質フロー単位の空間的分解が可能といえる手法として,地形図の水田,畑地等の土地利用ごとにあらかじめ切り出したリモートセンシング・データを分析する手法を開発し,今後の空間的物質フロー分析への適用に目途をつけた。 一方,地域農業を対象としたライフサイクル分析には物質フロー・インベントリーの作成が必要であるという認識から,農牧業に対する自然環境上の制約が強い地域の農畜産を例に,現在の物質フローの把握を試み,地域の畜産が植物資源の過剰利用の状態にあることを量的に明らかにした。さらに,定量的な物質フローの代替案を作成し,物質フローを体系化することの有用性を明らかにすると同時に,物質フロー分析が地域農業におけるライフサイクル環境負荷の分析に必要となるインベントリーの作成と持続的開発の検討に有効であることを示した。 また,養分投入のライフサイクルにおけるエネルギー消費・CO_2排出を検討するための基礎的検討として,化学肥料製造,農副産物リサイクルプロセスおよび農業生産・流通に関わるライフサイクル分析に着手し,現在その成果発表に向けたとりまとめ作業を進めている。
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