研究概要 |
本研究では,第一にライフサイクル分析手法の農業分野への適用を検討するために,LCAの目的体系を整理した。第二に,農業におけるエネルギー消費とCO2排出への寄与度が大きい化学肥料製造,農業機械の使用と製造に関する基礎データを,海外での調査を含め分析・整備した。第三に,ライフサイクル分析のシナリオ検討を目的として,ドイツにおける有機農業の実態・展望と施設の整備・維持管理に関わる事例データを収集・整備した。また,農村地域を対象としたライフサイクル分析のインベントリー作成に不可欠となる地域の物質インプット/アウトプットの実態の把握するために,農村地域の土地利用の空間分析に対するリモートセンシング技術,GISの検証を行い,リモートセンシングによる作付け分布(農地利用分布)の把握結果に基づいて,作物生産にともなう窒素およびリンの投入・吸収量と収支に関する分布を把握した。これらの成果からは,窒素・リン投入量の分布パターンの時期的な相違,年間投入量・吸収量の分布パターンの違いなどが明らかとなり,作物生産にともなう養分投入・吸収の分布把握が,地域における物質フロー,流域環境管理の考察に有用であることを示せた。さらに,地域農業を対象とするライフサイクル分析において重要と認識された農村地域の物質フロー分析を実施し,農村地域における作物生産と動物生産に関わるライフサイクル・エネルギーとライフサイクルにわたる炭素放出・流入を試算した。本研究では,このような多岐にわたる検討,分析,考察を通して,農林生産が展開される農村地域の環境側面からの総合的な評価・計画に対するライフサイクル分析手法の有効性を明らかにするとともに,関連基礎データを整備することができた。
|