研究概要 |
最初に,混植条件下での光・水の競合に関し基礎的知見を得た。タマリンド樹幹下にあるインゲンマメは、土壌水分が不足しない限り、個葉光合成を弱光条件に馴化させることで光不足による成育低下を抑える働きをもっていること、土壌水分が低下した場合、タマリンドとインゲンマメの水ストレス感受性が異なったため、両植物間で大きな水分競合は生じないことを明らかにした。次に、下層土と表層土間の毛管水移動を遮断したポットでキマメを栽培し両土層の体積含水率を継続測定したところ、表層土を無灌水状態としてもある程度の水分を保ちハイドロ-リックリフトによる表土層の加湿効果が示唆された。さらに,根の伸張を遮断する仕切板を片側に持つパン型容器中央にMarkhamia luteaを植えその周囲に陸稲(品種:陸捷)を栽植して、樹木の容器内の側根が作物の水分状態にどのような影響を与えるのかを調べた。その結果、表層土が乾燥するにつれ、最初は樹木と陸稲に水の競合が生じたが、さらに乾燥が進むと、側根側では陸稲の生存が維持されたのに対し、無根側では枯死した。このことから、アグロフォレストリー等において、樹木の根によるハイドローリックリフトが水ストレスの軽減を通して作物に恩恵を与える得ることが明らかとなった。このようなハイドロ-リックリフトの近傍作物への恩恵は、水の前者による滲出量と後者による吸収量のバランスに依存し、そのバランスは樹木と作物の葉面積や根の量と分布、および蒸散環境に関係していると考えられた。この検証にはモデル実験等が必要であるが、これは今後の課題として残された。
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