研究概要 |
本年度は昨年に引き続き表皮ケラチノサイトの分化形質であるデスモグレイン(DSG-1,2,3)のmRNA発現解析を行い、さらに、新たにヒト・アトピー性皮膚炎モデルマウスとして知られているNC/Ngaマウスより表皮ケラチノサイトの分離および細胞培養系の確立を試み、次いで、得られたケラチノサイトにおけるマトリックス・メタロプロテイネース(MMP-2,9)の発現、細胞増殖やアポトーシス誘導に対するTransforming growth fact or β(TGFβ)およびTumor necrosis factorα(TNFα)の関与についてBALB/cマウス由来表皮ケラチノサイトを対照として比較検討を行った。 BALB/cマウスおよびNC/Ngaマウスより表皮ケラチノサイトの分離および細胞培養系の確立に成功した。これら2系統のマウス由来ケラチノサイトの細胞増殖活性について検討したところ、両者に有意な差は見られず、また、TGFβおよびTNFαはともに細胞増殖率を低下させ、この効果はTGFβにおいてより顕著であったが、マウス系統間での差は見られなかった。また、TNFαはケラチノサイトに対しアポトーシス誘導活性を持つが、この効果はNC/Ngaマウス由来ケラチノサイトに比べBALB/cマウス由来ケラチノサイトで顕著であり、前者は後者に比べてアポトーシス誘導の起こりにくい特性を持つと理解された。MMP発現についてこれら2系統由来ケラチノサイトについて比較したところ、BALB/cマウス由来ケラチノサイトに比べNC/Ngaマウス由来ケラチノサイトにおいてMMP-9発現の低下が観察された。MMP-9発現増強因子として知られているTGFβおよびTNFαは両系統由来ケラチノサイトにおいてともにその発現の増強が見られたが、その効果に系統間の差はなかった。 以上の結果より、ケラチノサイトの分化形質は様々の要因により制御されている可能性が示唆された。今後、特に、MMP-9の遺伝子発現制御機構に重点を置き、そのプロモーター領域の解析を行うことでNC/Ngaマウス由来ケラチノサイトにおけるMMP-9発現の低下の要因について考察する予定である。
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