研究概要 |
筋肉塊に圧力を加える場合でも、抽出タンパク質に圧力を加える場合でも、それによって生じる状態変化を理論的に解明するためには、超高圧下での筋肉構成タンパク質や筋肉内の膜構造を構成するタンパク質の変性機構を明かにする必要がある。今年度は、筋肉内結合組織膜のプロテオグリカン抽出量に及ぼす高圧処理の影響を研究するとともに、筋原線維の主要構成成分の一つであるアクチンの高圧による変性機構を光学的手法(高圧下の蛍光およびUV、CD、NMRスペクトルの測定等)により測定し。以下のような結果が得られた。 1. 高圧処理区における結合組織からのプロテオグリカンの抽出量および分子量分布には、未処理区との間に大きな差異は認められなかった。 2. 熟成区においては、プロテオグリカンの抽出量の低下およびその低分子化が認められた。このことは、結合組織膜に対する高圧処理と熟成との影響に顕著な差異があることを示している。 3. 4次微分UVスペクトルの結果から、ATPが存在してもG-アクチンの変性は不可逆的であることが判明した。変性に伴うΔG^0は38.6kJ/mol,△Vは-123ml/mol,遷移圧力は293MPaであった。 4. G-アクチンのCDスペクトルの結果から、処理圧力の増加に伴ってa-へリックス含量が減少し、300MPaを超えると不可逆的な変性を起こすことが明らかになった。このことは蛍光スペクトル測定からも確かめられた。 5. ^1H NMRスペクトルの2.055ppmのシグナル強度が圧力強度の増加とともに減少し、400MPaで完全に消失することが明らかになった。
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