超高圧下での筋肉タンパク質変性機構の解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10460118
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 鈴木 敦士 新潟大学, 農学部, 教授 (40018792)
• 研究分担者: 中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480) ; 池内 義秀 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (90168112) ; 杉山 稔恵 新潟大学, 農学部, 助手 (10272858)
• キーワード: 超高圧 / 筋肉タンパク質 / ミオシンの圧力変性 / トロポミオシンの圧力変性 / 質量中心 / α-ヘリックス / ミオシンATPアーゼ / 加圧解凍

研究概要

今年度は、筋原線維の主要な構成成分であるミオシン及びトロポミオシンの高圧下での構造変化をCDおよび蛍光スペクトルから解析し、ミオシンの生物活性の変化は、圧力下および圧力解放後のATPase活性測定により研究した。応用的な検知から凍結肉塊を圧力によって解凍した時の、物性や微細構造の変化についても研究した。以下のような結果が得られた。
1.ミオシンATPase活性の圧力下での変化を測定した結果、圧力の増加と伴に活性は増加し、100MPaの加圧下で最大活性を示した。さらに圧力を加えると活性は低下し、200MPa下では未処理区よりも低い活性を示した。加圧後、圧力を開放し、ATPaseとCDスペクトルを測定した結果、200MPa〜400MPaにかけて、活性の著しい低下とα-ヘリックス含量の減少が認められた。また,加圧下で測定した質量中心の変化にも同様な傾向が認められた。この様な結果から、ミオシンは200MPa以上の加圧で不可逆的構造変化を引き起こすことが推察できる。
2.トロポミオシンに圧力を加え、解放後にCDスペクトルを測定し、α-ヘリックス含量を算出した結果、600MPaの圧力を加えても100%のα-ヘリックス含量を示した。このことは、トロポミオシンが酸や熱と同様に、超高圧に対しても安定なタンパク質であることを示している。
3.実用的な研究として、凍結肉の流水解凍(通常の方法)と圧力(5分間)による解凍を比較した結果、200MPa以下の加圧解凍は豚肉からのドリップの減少をもたらすと同時に肉の軟化を生じ、その後の肉製品の加工に有力な方法であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] 鈴木敦士: "高圧バイオサイエンスと高圧食品加工"日本農芸化学会誌. 74巻・5号. 603-604 (2000)
• [文献書誌] 池内義秀: "高圧による食品タンパク質の物性変化"日本農芸化学会誌. 74巻・5号. 612-615 (2000)
• [文献書誌] 鈴木敦士: "超高圧処理による肉質制御"2000年度韓国畜産分野総合学術大会要旨集. 1-6 (2000)
• [文献書誌] Atsushi Suzuki: "Pressure-induced changes in the connectin/titin localization in the myofibrils revealed by immunoelectron microscopy"Meat Science. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] 遠藤健彦: "超高圧処理がミオシンの構造とATPase活性に及ぼす影響"日本畜産学会第98回大会講演要旨集. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] 久保友人: "熟成及び高圧下におけるカテプシンDの免疫電子顕微鏡的局在生の変化"日本畜産学会第98回大会講演要旨集. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] 横井厚: "高圧バイオサイエンスとバイオテクノロジー"さんえい出版. 10 (2000)
• [文献書誌] 池内義秀: "高圧バイオサイエンスとバイオテクノロジー"さんえい出版. 11 (2000)
• [文献書誌] Yoshihide Ikeuchi: "Trends in High Pressure Bioscience and Biotechnology"Elsevier Science B.V.. 6 (2001)
• [文献書誌] Yoshihide Ikeuchi: "Trends in High Pressure Bioscience and Biotechnology"Elsevier Science B.V.. 6 (2001)
• [文献書誌] Shuhei Yamamoto: "Trends in High Pressure Bioscience and Biotechnology"Elsevier Science B.V.. 6 (2001)
• [文献書誌] Akira Okamoto: "Trends in High Pressure Bioscience and Biotechnology"Elsevier Science B.V.. 6 (2001)