胎盤は妊娠時の体内環境の調節や胎仔の発生・成長を支えるための多岐にわたる機能を果たしている。胎盤特異分子ファミリーである胎盤性プロラクチン(PRL)ファミリーはPRLや成長ホルモン(GH)と類似の構造をした一群の妊娠特異分子で、ラットでは10種類のメンバーのcDNAがクローニングされている。これらはペプチド一次構造から、胎盤性ラクトジェン(PL)とPRL様タンパク質(PLP)に分けられ、PLPの多くがPRLやGH受容体に結合しないことから、これらの分子に対応した新たな受容体の存在が提起されている。本研究において、我々はまず、PRLファミリー分子と受容体の相互作用およびPRLファミリー分子の昨日発現における糖鎖修飾の重要性を知る目的でPL-Imの糖鎖付加部位に着目した解析を行った。それにより、PL-Imタンパク上の糖鎖修飾は十分な生理活性を発現するためには必要であるにも拘わらず、PRL受容体との結合およびそれを介した細胞内情報伝達には必ずしも必要でないことを明らかにした。この結果は、PRL受容体以外にもPRLファミリー分子と相互作用する未知の受容体様分子が存在することを新たに示唆する。また、バキュロウイルスベクターと昆虫細胞を用いた系により調整した組換えPL-Imタンパクが生理活性を保持していることを示し、この系によるPRLファミリータンパクの大量調整が有効であることを報告した。以上に加え、ラットPRLファミリーに属する新規のタンパクをコードするcDNAの単離にも成功し、この分子がPLP-D同様、PRL受容体非結合性の分子であることを示し、PLP-Hと命名した。さらに、胎盤特異的ホルモン様物質のさらなる探索の結果、ラット胎盤海綿状栄養膜細胞層のみで妊娠中期以降に特異的に発現される遺伝子の単離に成功し、SSPと名付けそれが分泌タンパクであることを証明し報告した。
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