遺伝子レベルにおける乳腺発達と泌乳能力の調節機構の解明

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10460122
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 酒井 仙吉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80114487)
• 研究分担者: 青木 不学 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20175160) ; 今川 和彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00291956)
• キーワード: 乳腺 / ポリ(A) / mRNAの安定性 / カゼインmRNA / ミトコンドリアDNA / Tim23RNA / mRNAの半減期 / 泌乳開始

研究概要

マウスにおいて妊娠中と泌乳中にわたり、カゼインmRNAのポリAの長さと泌乳との関係、および、ポリAの長さとmRNAの安定性を決定する機構の解明を行った。調べたカゼインmRNAは、四種類のうち、ベーターカゼインとガンマーカゼインである。
いずれのカゼインmRNAにおいても妊娠中期ではポリAの長さが30程度であったが、分娩直前から発現するベーターカゼインmRNAにおいては発現直後に100程度へと伸長が認められた。ガンマーカゼインは分娩後から発現するが、発現後から同様な伸長が認められた。泌乳中では100以上のポリAとして保たれていたが、泌乳末期になると短縮が起こった。これは、泌乳初期と最盛期においてポリAを長くする能力が高く、一方、泌乳末期になるとポリAを長くする能力が低下するものであった。次に、その生理学的の解明を行い、ポリAの長さとmRNA安定性の間には正の相関があることを明らかにした。
妊娠中および泌乳末期の乳腺にはカゼインmRNAが存在するにもかかわらず、ミルクの合成がまったく起こらないか、あるいは、不活発である。ミルクの合成が活発であるためには、高いmRNAレベルを必要とするが、この時期のmRNAは分解を受けにくい。このことから、乳腺はカゼインmRNAのポリAの長さ変えることによって安定性を変化させ、ミルク生産量を調整していることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] T.KURAISHI and S.SAKAI: "The poly(A) tail length of casein mRNA in the lactating mammary gland changes depending upon the accumulation and removal of milk"BIOCHEMICAL JOURNAL. 347. in press (2000)
• [文献書誌] A.Yamaguchi et al.: "Idenfication of functional transcriptional factor AP-1 site in the sheep interferon t gene that mediates a response to PMA in JEG3 cell"BIOCHEMICAL JOURNAL. 340. 767-773 (1999)
• [文献書誌] Aoki F,Sakai S,Kohmoto K: "Hyperactived motility is induced by reagents depressing the function of calcilum in mouse sperm"Animal Science Journal. 70(3). 53-60 (1999)
• [文献書誌] Aoki F,Sakai,S: "Regulation of flageller bending by cAMP and Ca2+in hmaster sperm"Mol.Reprod.Dev.. 53. 77-83 (1999)
• [文献書誌] Aoki F,Schultz,RM.: "DNA replication in the 1-cell mouse embryo : Stimulatory effect of histone acetylation"Zygote. 7. 165-172 (1999)
• [文献書誌] H.Yamaguchi,et al.: "Effects of PMA and transcriptional factors on ovine interferon-t transactivation in various cell lines"Endocrine Journal. 46(3). 383-388 (1999)