研究課題
基盤研究(B)
反芻動物のエネルギー利用効率の向上と地球温暖化防止を目的として、ルーメンにおけるメタン生成を低下させるための基礎となる研究を実施し、本年度は以下の成果を得た。1. メタンを減少させるためには、その基質の一つのギ酸をメタン菌以外の菌に利用させることが得策であるため、ルーメン微生物混合系におけるギ酸の代謝について調べた。混合系の代謝能力としては、ギ酸は生成よりも消費の方が上回り、その消費は殆どがメタン生成であることが明らかとなった。しかし、他菌にもギ酸をH_2に転換できるものがあり、H_2はプロピオン酸生成に用いられることが判明したので、そのような反応系を担う菌を増加させればメタン生成を減少させることが可能と考えられた。2. メタンを減少させるためのもう一つの方法として、ギ酸生成の抑制が考えられるので、ルーメン微生物混合系におけるギ酸の生成経路について調べた。ギ酸生成反応系として、ピルビン酸-ギ酸開裂酵素反応の他に、シュウ酸からの生成も少なくないことが明らかとなり、この経路の制御によりメタンを減少させるという展望が示唆された。3. α-サイクロデキストリン包接ブロモクロロメタンを添加した飼料を牛に給与したころ(10mg/kg体重)、わずか1日後にはメタン生成が低下し、多量のH_2が発生した。本剤の投与により、ルーメン液のプロピオン酸および酪酸の比率が増加した。VFA総量は減少しなかったので、発酵の顕著な阻害はないと考えられた。乾物消化率はやや低下たが、NDFおよびCPの消化率には有意差はなく、プロトゾア数は減少しなかった。
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