脳内血糖センサーの局在と血糖センシングメカニズム

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10460131
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 前多 敬一郎 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (30181580)
• 研究分担者: 束村 博子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (00212051)
• キーワード: 黄体形成ホルモン(LH) / 血糖 / グルコキナーゼ / グルコーストランスポーター / セロトニン / 血管内皮細胞 / 摂食行動

研究概要

絶食時などの血糖利用低下時には、繁殖機能が抑制され、一方摂食行動が誘起されることが知られている。これらの生理学的変化を誘起する血糖値センサーは膵臓などの末梢器官だけではなく、脳内にも存在することがこれまでの研究より示唆されている。本研究では、膵臓における血糖センシングに関わるとされるコンポーネントとして、グルコーストランスポーター2(GLUT2)および膵臓型グルコキナーゼ(pGK)に注目し、これらの蛋白に対する抗体を用いて脳の様々な領域の免疫組織化学を行った。その結果、側脳室、第3脳室、第4脳室および中心管などの脳室壁を構成する上衣細胞の細胞質にpGK免疫陽性反応が見られた。また、これら上衣細胞の繊毛にはGLUT2の局在が見られた。さらに、セロトニン作働性神経の細胞体が多数分布する縫線核にもpGK免疫陽性細胞が観察され、これらの細胞はセロトニン作働性神経の細胞体と一致した。また、一部の血管内皮細胞の近傍にもpGK免疫陽性が観察された。一方、肝臓型のGK(hGK)に対する抗体を用いて同様に実験を行った場合は、脳内にその免疫陽性部位は認められなかった。これらの結果より、血糖利用性の変化は、上衣細胞あるいはセロトニン作働性神経によりセンシングされること、またそのセンシングメカニズムは膵臓のインスリン分泌を制御す際のメカニズムと一致する可能性が示唆された。これらのセンシング機構により、血糖利用性の低下感知され、黄体形成ホルモン(LH)のパルス状分泌および摂食行動を調節するものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Tsukahara,S.: "Effect of corticotropin-releasing hormone antagonist on oestrogen-dependent glucoprivic suppression of luteinizing hormone secretion in female rats."Journal of Neuroendocrinology. 11. 101-105 (1999)
• [文献書誌] Tsukahara, S.: "Morphological characterization of relationship between gap junctions and gonadotropin-releasing hormone nerve terminals in the rat. median eminence."Neurosicience Letters. 261. 105-108 (1999)
• [文献書誌] Maekawa, F.: "Localization of pancreatic glucokinase-like immunoreactivity in the rat lower brainstem: A possibility to the brain glucose-sensing mechanism."Endocrinology. 141. 375-384 (2000)
• [文献書誌] Maekawa,F.: "Prevention of inhibitory effect of dorsal raphe nucleus lesioins on ovulation and LH surge by 5-HT 2A/2C receptor agonists in female rats."Neuroscience Research. 291-298 (2000)
• [文献書誌] Tsukamura, H.: "Peripheral or central administration of motilin suppresses LH release in female rats: a novel role for motilin."Journal of Neuroendocrinology. 12(印刷中). (2000)
• [文献書誌] Tsukamura, H.: "Intracerebroventricular administration of melanin-concentrating hormone suppresses pulsatile luteinizing hormone release in the female rat."Journal of Neuroendocrinology. 12(印刷中). (2000)
• [文献書誌] Maeda,K.-I.: "The Digital Handbook of Experimental Animals: The Raboratory Rat"Academic Press (印刷中). (2000)
• [文献書誌] Tsukamura, H.: "Progress in Brain Research"Elsevier (印刷中). (2000)