研究課題/領域番号 |
10460133
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研究機関 | 高知医科大学 |
研究代表者 |
椛 秀人 高知医科大学, 医学部, 教授 (50136371)
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研究分担者 |
谷口 睦男 高知医科大学, 医学部, 助手 (10304677)
奥谷 文乃 高知医科大学, 医学部, 助手 (10194490)
高橋 聖一 高知医科大学, 医学部, 助教授 (40271093)
森 裕司 東京大学, 農学部, 教授 (40157871)
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キーワード | フェロモン / 記憶 / 副嗅球 / 樹状突起間相反性シナプス / イオンチャネル型グルタミン酸受容体 / 代謝型グルタミン酸受容体 / 一酸化窒素合成酵素mRNA |
研究概要 |
記憶学習という高次の脳機能が、脳のどこのどういうメカニズムによって担われているのかは、脳科学が解明すべき重要問題の一つである。我々が解析してきた、交尾刺激を引き金として雌マウスに形成される雄フェロモンの記憶は、妊娠の成立に不可欠な、生存価の高い記憶であるとともに、記憶学習研究の新しいパラダイムとして有用である。なぜなら、鋤鼻系の最初の中継部位である副嗅球に生ずるシナプスの可塑的変化と学習が直接に対応しているからである。我々は、交尾刺激により賦活されたノルアドレナリン神経の働きを引き金として、種々の情報分子(代謝型グルタミン酸受容体mGluR2、カルモジュリン、プロテインキナーゼ、一酸化窒素)が関わり、僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプスに形態変化が生ずることを示してきた。われわれはまた、新生仔ラットにおける匂い学習も優れたモデル系であると考え、そのメカニズムを解析してきた。本研究の目的は、これまでの成果を基盤として、フェロモン記憶形成機構を解明することであった。平成12年度において下記の知見を得た。 1.フェロモン記憶に関わる副嗅球の僧帽細胞と顆粒細胞との樹状突起間シナプス伝達をスライスパッチクランプ法により解析し、顆粒細胞を介した僧帽細胞のフィードバック抑制に顆粒細胞のN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体が重要な役割を演じていることを明らかにした。一方、代謝型グルタミン酸受容体mGluR2の活性化は逆にこのフィードバック抑制を抑制した。 2.副嗅球の顆粒細胞には非常に高い一酸化窒素合成酵素活性が認められる。我々はすでに、一酸化窒素発生剤を副嗅球へ注入すると、記憶形成が促進されることを証明している。今回、フェロモン記憶形成の臨界期に神経型一酸化窒素合成酵素mRNAの発現が有意に増大することを認めた。 3.幼若ラットにおける匂いの学習に主嗅球のセロトニン5-HT2受容体及びドーパミンD2受容体が関わることを明らかにした。
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