1.ウシの膵臓には4種類の膵島ホルモン分泌細胞から構成される小膵島とインスリン陽性の細胞でほとんど構成されている大膵島の2種類の膵島が存在する。 2.大膵島は胎児期に出現し、分娩直前に最大の面積となるが、生後6ケ月には消失する。小膵島は大膵島と同様に胎児期に出現し、分娩直前に最大の面積となるが、生後徐々に減少する。 3.ウシ膵島のGH様物質は小膵島のグルカゴン分泌細胞(A細胞)に局在し、大膵島ではインスリン陽性の細胞に局在する。成長ホルモン放出因子(GRF)は膵ポリペプチド分泌細胞に局在する。IGF-1とIGF-2は小膵島のA細胞に局在する。しかし、大膵島のインスリン陽性細胞には存在しなかった。4.ウシ成長ホルモン、ウシ胎盤性ラクトゲン、ウシプロラクチン、サケソマトラクチンをもとにしたプライマーや、ほ乳動物の成長ホルモンの塩基配列をもとに設計されたプライマーによるRT -PCR法では、いずれも膵臓のGH様物質のcDNAの増幅はできなかった。 5.膵臓のGRFのcDNAの増幅にウシ視床下部型、ウシ膵臓型のGRFプライマーを設計し、RT-PCR法を試みたがいずれも増幅されなかった。 以上の結果からウシ膵臓には視床下部-下垂体と同様にGRF-GHシステムが存在し、胎児期から新生児の急速な成長に大膵島が深くかかわっていると考えられる。また、現在のところ、膵臓のGH様物質とGRF様物質の塩基配列の決定はされていないが、フランスガモの膵臓でラット・ニワトリ・ヒト型のGHプライマーでcDNAの増幅がされたことから(土屋)ウシ膵臓のGH様物質の塩基配列はウシ下垂体型GHとは異なることが考えられる。
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