研究概要 |
1. インヒビン、アクチビンA,AB,Bとフォリスタチンの標準品の作成 我々の研究目的の物質であるインヒビンファミリー物質に関して国際的な標準品もなく、ましてや市販品も殆どない。従って、研究者によって報告されるインヒビン関連活性物質の生物活性や免疫測定法による測定値が異なる。そこでまず始めにウシとブタの卵胞液から大量のインヒビン関連物質を精製し、アミノ酸分析を行った。その結果に基づき、各生理活性物質の1mg/mlあたりの280nmの吸光度を求めた。これらの物質をインヒビン関連物質の国内あるいは国際スタンダードとして用いることができる。それらの吸光度を用い超微量の他の動物のインヒビン関連物質の定量も行うことが可能となった。 2. 人の卵胞液からのインヒビンの精製に成功し新たなインヒビン濃度の評価が可能となった。 ヒト卵胞液中のインヒビン濃度は非常に低く、今まで精製に成功していない。我々の開発した免疫吸着クロマト法により、10リットルのヒト卵胞液からインヒビンを50万倍精製し、純品のヒトインヒビンを得た。これを標準品にしてヒト血中インヒビンを測定すると、今までの報告と異なり、インヒビンの濃度は10倍以上高いことが判明した。 3. 視床下部から分泌されるGnRHによって下垂体からのゴナドトロビン放出は促進される。しかし、GnRH遺伝子欠損マウスを用いると、下垂体中のFSH細胞と含量はアクチビンによって著しく増加することが明らかにされた。これらの結果はFSHの合成と分泌にはLHのそれとは全く別の経路が存在することを示した。 今後、視床下部-下垂体-性腺軸のインヒビンファミリー物質の存在と変動を明らかにすると共に、生殖現象における相互の役割を明らかにする予定である。
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