研究概要 |
本研究は、腸管出血性大腸菌(志賀毒素産生大腸菌:STEC)感染症の中で、最も多く見られるSTEC O157,O26およびO111について、ヒトおよび家畜からの菌検出と同時に血清学的診断法を確立することを目的とし、調査・実験を行なった。 1. STEC感染者について、O157およびO26抗体価および志賀毒素(STx)1および2抗体価を調べた。STEC O157およびO26感染の初期(7-10日以内)にO抗体(Ig-M)価の上昇、またSTx1および2抗体(Ig-M)価の上昇する者が見られた。さらにO抗体およびSTx抗体(Ig-G)価は3〜4週後から上昇する者も認められた。 2. STEC検査に免疫磁気ビーズ(O157,O26およびO111)を作製し、その有効性を調べ、さらに牛糞便中のSTEC検査を行なった。その結果、STEC<10^1cfu/g添加した糞便では試料を増菌後、ビーズで集菌し分離培地に塗抹培養(3〜5集落釣菌)することにより、ほぼ確実に検出することができた。またPCR法により牛(農場)のSTEC調査した結果、1才未満(特に1〜4ヵ月令)の子牛から高率(40〜60%)に検出され、さらに成牛では乳牛(ホルスタイン種)に比べ肉牛(黒毛和種)が高い傾向を示した。しかしO157,O26およびO111免疫磁気ビーズを用いた方法でも、STEC-O157,O26およびO111の保菌率は低かった(1%以下)。3.子牛にSTEC O157を経口投与すると13〜14週後からIg-G抗体が上昇し始め、また幼牛に投与した場合、1〜2週後にIg-M抗体の上昇が見られた。他方、農場から採取した成牛では、O157およびO26 Ig-MおよびIg-G抗体価の高いもの(1.7〜12%)、また3〜4ヵ月間高い抗体価を持続する牛も見られた。以上の結果、血清中のO抗体およびSTx抗体価の測定は、本感染症の診断に有効であると考えられる。
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