最近野外で優勢に分布するIBVの最も大きな特徴は、従来の呼吸器病を引き起こすIBVが影を潜め、腎炎を主徴とするIBVに変化しているとである。この傾向はヨーロッパ他多くの国の養鶏産業界でも認められている。過去30年余各種IBワクチンが世界の養鶏界で広く用いられてきたにもかかわらず、IBは撲滅されず病型を変えて猛威を振るっているのである。この現象がなぜおきているのかという点は解明されていない。IB防遏法確立の為にはこの現象が起きている要因を解明する必要がある。 私たちはIBVのヒナへの侵入門戸はこれまで考えられてきた呼吸器のみではなく、同一IBV株でも感染経路を変えて接種すれば、従来考えられてきた病型とは違う病型を実験的に作り得る可能性を考えてきた。すなわち、IBVの自然感染は、呼吸器に限定されているのではなく、これまで専ら排泄器官とばかり考えられてきた総排泄腔からも起きているのではないかと考えたのである。 そこで、SPFヒナの総排泄腔からIBVを実験的に接種した場合、呼吸器病のみを起こすと考えられてきたIBVが、高率に腎炎をお起こし得るか否かという点を検討した。 その結果、腎炎型IBVは総排泄腔接種により、より高率に腎炎を再現させた。呼吸器病型IBVも腎炎を起こすことを認めた。特に、後者の場合、SPFヒナの腎臓で継代することにより、腎炎を強く起こすIBVに変異することを認めた。したがって、これまで考えられてこなかった、IBVの総排泄腔からの自然感染について考慮する必要性の高いことが明らかである。
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