長野県上伊那郡南箕輪村村有大芝高原アカマツ群落(林齢20-29年、植栽密度:1500本/ha、平均樹高:約15m)に、25mタワーを設置し、1998年8月から11月下旬まで、NO2濃度やNO2フラックス(NO2吸収量)および各種微気象要素の連続観測を行った。NO2濃度は、8月においては平均約40ppbであった。しかし、その後、11月下旬までは約10ppbと低濃度であり、高分解能NO2分析計によってもNO2フラックスを測定することができなかった。8月の測定データを解析したところ、NO2吸収量を評価するのに、NO2フラックスを大気中NO2濃度で除算して得た沈着速度(K)を用いるとよいことが分かった。 8月の沈着速度(K)の最大値は約1.8cm/sであった。Kは、気象条件のうちでは、日射量の影響が最も大きく、日射量と光合成量の関係のように、日射量が増大するにつれてKが増大する関係が認められた。この原因は、日射量の増大に伴う気孔開度の増大が考えられた。東京農工大学農場(府中市)のコムギ畑においても沈着速度を測定した。その結果、Kの最大値は1.4cm/sで、日平均値は、約0.4cm/sであった。アカマツ群落の値と大差ないことが分かった。 アカマツ群落とコムギ畑のNO2吸収量を、日日射量が15MJ/m2、NO2濃度が50ppbの条件をもとに、今回の測定結果で得られたKと日射量の関係によって計算すると、約130g/ha/日となることが分かった。この値は47kgNO2/ha/年となり、年間の葉中に蓄積される窒素成分量と比べて無視できない値であることが分かった。 平成11年度では、同じアカマツ群落および作物畑において季節的吸収量の比較を実施する計画である。
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