研究概要 |
本研究は,ティラピアの閉鎖生態系循環式養殖システム構築を目的に,微細藻類および動物プランクトンの各種間のガス交換および物質循環を行い,水圏系内において,生物間の食物連鎖を利用することにより、それらの効率化を図ることを目的としている。本年度は,密閉式魚類飼育装置を用いて、1.光周期の違いとティラピアの酸素消費量との関係、2.6ヶ月間の長期飼育時において、飼料給餌に付加された排泄物の微細藻類への利用、3.植物プランクトンのティラピア仔稚魚の初期生残に対する影響について調べた。 1.光周期を3L:3D;6L:6D;12L:12D(対照区);24L:24Dの4区を設け、体重約8.5gのティラピアを用いて明期と暗期における酸素消費量を密閉式魚類飼育装置を用いて調べた結果、対照区に比較し明暗両期の回転数が早くなると、酸素消費量の増加、遅くなるとその減少が顕著に見られた。2.ティラピア飼育による堆積物や飼育水の元素分析を行い、微細藻類の培地組成と比較した結果,窒素は飼育水中のもののみで十分利用できるが、リンはアパタイトリンの形態であることから、そのままの利用は困難であることがわかった。カリウムおよびマグネシウムは飼料中に溶存していたが,絶対量が不足していることから,藻類が利用できる形態での補充が必要であることも明らかにした。 3.生クロレラ(CH)を用いてふ化直後のティラピア仔稚魚を飼育したところ、8日目頃より生残率の低下が見られ、1L当たり2.71,27.1及び271mgのいずれのCH給餌区とも15日目には生残率が15%以下となった。すなわち、CHはティラピア仔稚魚の餌としては不適であることが示唆された。最終年度は,ティラピア排泄物を用いて、実際の緑藻培養を行い、栄養塩吸収率を把握し、物質の循環率を算出するとともに、完全閉鎖の際に用いる生物飼料を用いた物質収支を把握する予定である。
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