研究概要 |
(i) タンニンモデル化合物からのウレタン合成: 単純モデル化合物として本年度は、縮合型タンニン構成単位のA,B,C各環にそれぞれ対応する5-メトキシレゾルシノール(MR),3,4-ジヒドロキシトルエン(DT),2-フェニルエタノール(PE)を選択し,これらとフェニルイソシアナートとの反応生成物を単離しその化学構造を明らかにした.その結果,MRから3-メトキシ-5-フェニルカルバモイルフェノール(MRU-1)と3,5・ジフェニルカルバモイルアニソール(MRU‐2)が,DTからは3-ヒドロキシ-4-フェニルカルバモイルトルエン(DTU-1)と3,4-ジフェニルカルバモイルトルエン(DTU-2)が,そしてPEからフェネチルフェニルウレタン(PEU)がそれぞれ生成した. (ii) ウレタン化反応速度に関与する触媒活性の解明: 上のモデル化合物と触媒を無水アセトニトリルに溶かし,撹拌しながら等モルのPIを添加して反応を開始した.経時的に反応液を採取してリン酸緩衝液で希釈して反応を停止した.HPLCによって生成物濃度を測定し,三次式を用いた近似方により反応初速度を算出した.触媒としてDABCO (1,4-diazabicyclo[2,2,2]octane) とDBTDL (di-n-butyltindilaurate)を用いた。その結果,DABCOはカテコール及びレゾルシノール型のフェノール性水酸基のウレタン化に触媒活性を示すのに対し,DBTDLはアルコール性水酸基に効果を示すことが明らかになった。この知見は,タンニンからのPUF合成に際しの特定の水酸基が優先的に反応する条件の設定に寄与すると期待される。 (iii) さらにタンニン由来ポリウレタンの加水分解速度に関しても興味ある知見を得ており、タンニンとジアミン(ジイソシアナートの原料)の回収の可能性を示した。
|