研究概要 |
(i)タンニンモデル化合物の反応:本年度は、やや複雑なモデル化合物として縮合型タンニンの典型的構成単位に相当する(+)カテキンを選択し,触媒としてDABCO(1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン)又はDBTDL(ジ-n-ブチル錫ジラウリン酸)を用いて,フェニルイソシアナート(PI)との反応生成物の化学構造を明らかにした.その結果,DABCO触媒存在下に当モルのPIを用いた場合には先ずカテキンのB環水酸基が反応した3'-O-フェニルカルバモイルカテキン(CU-1a)と4'-O-フェニルカルバモイルカテキン(CU-1b)が生成し,PI投与量を増せば3',4'-ジ-O-フェニルカルバモイルカテキン(CU-2)が単離された.さらにPI投与量を増し反応時間を長くしたところA環も反応した3',4',5-トリ-O-フェニルカルバモイルカテキン(CU-3a),3',4',7-トリ-O-フェニルカルバモイルカテキン(CU-3b)及び3',4',5,7-テトラ-O-フェニルカルバモイルカテキン(CU-4)が生成した.しかし,ペンタ-O-フェニルカルバモイルカテキン(CU-5)はDABCO触媒を用いた条件下では生成しなかった.一方DBTDL触媒を用いた場合にはカテキンの反応性は著しく低下した.この原因は,錫に等モルのカテコール構造が配位したカテキン-ジブチル錫錯体の生成にあることを明らかにした.この知見に基づき,カテコール水酸基をブロックしたCU-4をDBTDL触媒存在下に反応させ,CU-5を生成させることができた. (ii) スギ樹皮の液化について検討し、ポリエチレングリコール中で亜硫酸水素ナトリウムと反応せしめ,縮合型タンニンを多量に含む外樹皮の液化率約70%を達成した.この樹皮液化物からポリウレタンフォームを調製する技術の可能性を示した。
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