植物の細胞内光シグナル伝達の分子機構をcGMPに焦点を当て解析し、以下の結果を得た。 1.ダイズ光独立栄養培養細胞(SB-P細胞)中のcGMP合成酵素(グアニル酸シクラーゼ)、cGMP分解酵素(cGMPホスホジェステラーゼ)、及びcGMP結合タンパク質の精製と活性検出を種々の方法で試みたが、いずれの活性も検出できなかった。 2.前年度クローニングした、動物のPKGのcGMP結合ドメインと塩基配列の相同性を有するアラビドプシスの全長cDNAクローンを大腸菌と酵母で大量発現させ精製した。精製タンパク質のcGMP結合活性は現在まで検出されておらず、何らかの活性化機構の存在が示唆された。 3.前年度までに見出したSB-P細胞中の光シグナルによって活性化される46kDaプロテインキナーゼ(LAPK)を硫安分画、イオン交換および疎水性カラムクロマトグラフィー、ヒストンを用いるアフィニティーカラムクロマトグラフィー等により部分精製した。今後も引き続き精製を進める。 4.前年度までに単離したcGMPにより発現が抑制される数種の遺伝子中にCa依存性プロテインキナーゼ(CDPK)遺伝子断片を見出し、これをプローブとしてCDPK-AとCDPK-B cDNAをクローニングした。これらの遺伝子のcGMPと光による発現抑制をノーザン分析によって確認した。この結果、植物においてcGMPがCDPK遺伝子の発現調節を通してCaシグナル伝達を制御していることが明らかになった。
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