スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、アスコルビン酸パーオキシダーゼ(APX)が、植物体で酸素ストレスに対し、時期特異的、組織特異的に応答する分子機構を解明すると共に環境ストレス耐性植物を作出する目的で研究を進めた。その結果、以下に示す成果を得た。 1.活性酸素消去に関わる重要な酵素のcDNA、核遺伝子構造を明らかにした。それらは、イネ鉄型スーパーオキシドディスムターゼcDNA、アスコルビン酸パーオキシダーゼcDNA、リンゴ酸脱水素酵素cDNA、イネグルタチオン還元酵素遺伝子である。 2.植物の細胞質型スーパーオキシドディスムターゼ、グルタレドキシン、チオレドキシン遺伝子のプロモーター領城に酸化・還元状態(Redox)に応答し発現調節するために機能していると考えられる77塩基から成る共通配列があり、この内部にさらに28塩基からなるAT richな領域(CORE II)が有ることが判った。 3.CORE IIはシス因子であり、これに特異的に結合する核タンパク質が存在することを確認した。 4.植物から単離したSOD(ホウレンソウ)、APX(シロイヌナズナ)をタバコの葉緑体中に過剰発現する形質転換タバコを作製した。これらの形質転換体は非形質転換タバコに比べ、低温、乾燥ストレスに対し強い耐性を示し、環境ストレス耐性植物育種にとってSOD、APXは有用な遺伝子であることが明らかとなった。
|