研究概要 |
本研究の主たる目的の一つは、プロトンポンプ(H^+K^+-ATPase)のイオン認識・輸送機序を分子レベルでることである。ポンプのαサブユニットは膜を10回貫通し、1033個のアミノ酸からなる。そのどの部位(複数)がプロトンやカリウムイオンを認識するか、イオンを輸送する部位であるかを解明する。これらの機能に直接的にかかわる部位として、N末より数えて、4,5,6,8番目の膜貫通領域に存在し、負荷電を有するアミノ酸6個にまず注目する。これらのアミノ酸を種々の他のアミノ酸に置換し、ポンプの性質の変化を調べることより、これらのアミノ酸の役割について研究を進める。また、Na^+,K^+-ATPaseとのキメラ体を多数作製し、その機能の変異を調べることで、機能部位を特定する。 今年度においては、カリウムイオン結合部位に結合する特異的阻害剤 SCH 28080の結合部位を明らかにする研究を行った(J.Biol.Chem.1999,3月号)。その研究においてはαサブユニットのH^+,K^+-ATPaseとNa^+,K^+-ATPaseとのキメラ体を多数作製し、その性質の多様な変化より、αサブユニット各部の機能を調べた。プロトンポンプには上述のαサブユニット以外にβサブユニットが存在するが、その作用はほとんどわがっていない。βサブユニットのH^+,K^+-ATPaseとNa^+,K^+-ATPaseとのキメラ体を多数作製し、その遺伝子発現、機能の性質を調べた(投稿中)。また、胃のプロトンポンプによく似ている大腸のプロトンポンプの遺伝子を細胞に発現させ、その性質の研究を行った(Am.J.Physiol,1998)。その他表題に関係する研究を展開中である。
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