研究課題/領域番号 |
10470009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤池 紀生 九州大学, 医学部, 教授 (30040182)
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研究分担者 |
李 禎燮 九州大学, 医学部, 助手 (50294913)
野田 百美 九州大学, 医学部, 助手 (80127985)
鍋倉 淳一 九州大学, 医学部, 助教授 (50237583)
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キーワード | パソプレッシン / V1、V2受容体 / 細胞内情報伝達系 / アデニールサイクレース / PKA / Ca^<2+> / CaMは依存性アデニールサイクレース / グリシン応答 |
研究概要 |
海馬に投射するバソプレッシンがCA1領域の錐体細胞にどのような生理作用を発現しているのか明らかにするのが本研究の目的である。ラット海馬よりCA1錐体細胞を単離した後、ニスタチン穿孔パッチ記録法を用いて以下の実験を行った。バソプレッシン単独では何らの生理作用を惹起しなかったが、本ニューロン群に投射している抑制性化学伝達物質であるグリシンで発生するCl応答を用量依存的に抑制した。このような抑制はバソプレッシンがV1とV2の両受容体に作用して相加的に発現することがV1とV2の選択的アゴニストやアンタゴニストを使用することで明らかになった。その両受容体を介してグリシン応答を抑制的に修飾する細胞内情報伝達系は以下のようになっていた。V2受容体の賦活はGs蛋白を活性化してアデニールサイクレース(AC)を刺激し、cAMPを経てPKA活性をたかめてグリシン受容体・Clチャネル複合体を細胞内より抑制する。他方、V1受容体の賦活はGq蛋白を活性化してフォスフォライペースC(PLC)を刺激、IP_3を産生→細胞内CaストアーよりCa^<2+>を遊離-Ca^<2+>/CaMを賦活する。その後、興味あることにCa^<2+>/CaMはこれに感受性を持つACを活性化し、cAMPを経てPKA活性をたかめてグリシン応答を抑制する。このようにバソプレッシンは2つの異なるV1とV2受容体を同時に刺激して、それらの効果は異なる細胞内情報伝達系を経由して細胞内でクロストークし、その結果としてグリシン応答の相加的抑制が発現することがはじめて明らかとなった。また、本結果はV1とV2をそれぞれ選択的に刺激するアゴニストを用いた実験からさらに確実なものとなった。よって、一年目の研究計画は完全に遂行された。
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